2人で仕事し始めてからまだ2年足らず。
いやあ短いようで長かったねえ〜。
田中さんと出会って初めての仕事が2006年1月6日のジェイカレッジ公演。あの日から信じられない日々の連続でしたよ〜。地方公演の仕事もいただいちゃって。福岡、富山、名古屋と。富山へ行ったときなんて、飛行機で田中さんの前の席に安倍さんと麻生さんが並んで座ってましたもんねえ。空飛ぶ内閣って感じ。あのとき田中さんが財務大臣に見えましたもん。
ハハハ・・・(笑)。ところで、落語家さんの仲間うちで言われない?「志の吉、お前、会計士と一緒に何やってんだ?」って。オレ今でもまだあちこちで「落語家と何してんの?」って訊かれて、いまだに答えに困るんだよな。まさか2人で真面目に「貸借対照表×火焔太鼓」とか「ライブドア事件×千両みかん」の組み合わせを考えて、悩んで演じているとは誰も思わないだろうからね。
「内部統制×藪入り」は特にうまくいきましたよね〜。
自分たちで言うのも何ですけど。
いやいやあれは傑作。みんなからすごく好評だった。会場で泣けたってお客さん、多かったよ。オレもやってて自分で泣けてきたもん(笑)。でもさ、ビジネスの最前線と古典落語って思ったより相性いいよね。そう思わない?
ボクもビジネスマンの人たちに、あんなにスグ落語が受け入れられるとは思いませんでした。落語とビジネスマンの間にある敷居を田中さんが低くしてくれたことに本当感謝です。
おかげでボク、公認会計士の人の名刺をたくさん持っている落語家ナンバーワンだと思いますよ。自信あります。もう、公認会計士の名刺だけでトランプができそうなくらいです!
オレだってまだ落語を知ってから日が浅いけど、2人の活動がキッカケで落語を知ったって知り合いすごく多いのね。その人たちが志の吉ファンになって、それから師匠(立川志の輔)を聴いたりして、落語にのめり込んでるヤツたくさんいる。みんなに潤いを与えてくれてこちらこそ感謝してますよ、ホント(最敬礼)。
いやいや、こちらこそ。まさか自分が日経キャリアマガジンに連載できたり、日経の丸の内キャリア塾に出演できるとは思わなかったですから。それまで「日経」という言葉を聞くだけで微熱が出るくらいだったんで(笑)。それに田中さんの周りが落語会に来てくれるようになったお陰で、客席に若い方が増えました。女性の方も。イエーイ。
そりゃあもう、落語雑誌の「熟女ウケもバッチリ」部門の第1位落語家だし。
若い人ももちろん嬉しいですが、落語を知らなかった方が独演会に来てくれるのは本当に嬉しいことです。
実際、落語って、ビジネスの話し方とかプレゼンテーションを学ぶ宝庫みたいなところがあるもんね。よく対談や公演で弟子入りや修行の話をしてもらうじゃない? あれもビジネスマンの反応すごいよね。いまビジネス界って新人に甘いというか過保護だから、「そのへんにいろ!」的な師弟関係ってすごく新鮮に響くみたい。オレ自身、志の吉くんから師弟関係とか弟子同士の話しを聞くと、すごく勉強になるもん。本物はこれだ!ってさ。本当に羨ましいよ。若いうちからちゃんと鍛えられて。
羨ましいならいつでも代わりますよ(笑)。たぶんビジネス界も落語界も、基本ってあんまり変わらないんでしょうね。
そうそう、それ。同じ人間だから変わらない。オレも志の吉くんと知り合って分かったんだけど、落語家という人間がいるワケじゃなくて、落語家という職業があるだけなんだよね。落語家という職業で悩む以前に一人の人間として悩む。それは実はこちらも同じでさ、会計士という職業で悩むと同時に人間として悩む。
人間として悩みの部分はどの職業でもあまり変わらない気がするな。古典落語って、その悩める人間の肯定みたいなストーリーが多いから、長く残っているんじゃないかな。
そうですねえ。悩みの形は変わっても、悩みの本質は昔も今も変わらない。つまり、「人間って、そんなもんだよ」と古典落語は教えてくれるんでしょうね。
最近のビジネス界って常に上を目指すような「もっともっと」って空気があるけど、だからこそ「ありのままでいいんだよ」って教えてくれる古典落語に惹かれるのかもしれないね。
これからも疲れたビジネスマンの方がボクの独演会に来てくれて、少しでもストレスを発散してもらえると嬉しいですね。・・・・あ、でも、客席でむずかしい顔するのだけは勘弁してもらいたいですけど(笑)。